はじめに

はじめに

長年心血を注いで育ててきた自分の会社を、わが子に継がせたいと願う経営者は多くいます。

近年、中小企業の経営者は軒並み高齢化しており、後継者への事業承継を喫緊の重要課題と捉えている経営者が増えています。しかし、現実には後継者との対立が表面化したり、親族間の相続トラブルが発生したりして、事業承継に失敗する企業が後を絶ちません。結果的に、後を継がせることができない、あるいは継がせたけれども事業が立ち行かないという理由で、大切な会社が廃業に追い込まれてしまう例も少なくないのです。野村総合研究所が2012年に行った調査によると、後継者の育成・承継に障害を感じている中小企業は、54%。約半数の企業が事業承継において悩みを抱えている事実が浮き彫りになっています。

中小企業の経営者は日々の業務に手いっぱいで、後継者の育成や相続対策といった引退後の準備がおろそかになりがちです。自分の子どもなのだから、いざとなればしっかり後を継いでくれるだろうと信じているかもしれませんが、経営の能力や考え方を子どもが自然に身につけてくれることは、ほとんどありません。子どもに自分なりのビジョンがある場合は、承継直前になってあれこれ指導しようとしても、「今さら口出しされたくない」と反発してしまいます。そして親の経営理念や事業戦略を捨て、無茶な拡大路線や新規事業にトライした結果、古参社員の離反、収益の悪化を招いて企業の存続が危機にさらされることもあるのです。

さらに、親子間の事業承継には、後継者争いや遺産分割という厄介な問題もつきまといます。会社そのものはもちろん、株式や不動産、個人の資産などのさまざまな財産を、相続人全員が納得するかたちで配分することは簡単ではありません。

引退ギリギリまで経営に邁進してきた結果が、承継失敗による廃業や親子間の対立、親族間の争いになってしまうことほど、報われないことはありません。人生を捧げて築き上げてきた会社を、愛するわが子にトラブルなく継がせるためには、どうすればよいのでしょうか。

私はこれまで、税理士として約200社以上の事業承継や相続をサポートし、円満な引き継ぎを実現してきました。業種も経営者の家族構成も、事業の規模も経営理念も企業によってさまざまですが、「親子のコミュニケーション」に注力して準備をすれば、どんな企業でも円満な事業承継が可能だと断言できます。

事業承継失敗の背景にあるのは、決定的なコミュニケーション不足です。そこで本書では「親子の対立」「親族同士の争い」「後継者と従業員のトラブル」を回避するためのコミュニケーションの秘訣をまとめました。実際に私が関わった事例をもとに、30の項目に整理して解説しています。

日本経済を支えているのは、昔も今もこれからも中小企業です。中小企業が存続していくことが、この国の明るい未来に繋がります。

オーナー家族の幸せのためはもちろん、従業員や日本の未来のためにも、円満な親子承継を成し遂げてもらいたい。親子承継の失敗で潰れていく企業を一社でも減らしたい。そのために、本書がお役に立てばこれ以上の喜びはありません。

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