CASE14
頻繁な業者会や紹介ノルマに、取引先が総スカン
CASE14
頻繁な業者会や紹介ノルマに、取引先が総スカン
Oさん 45歳 飲食業
サービス業やメーカーには「業者会」というものがあります。飲食業を営むOさんはこの業者会が好きで、ゴルフコンペを頻繁に開いていました。
Oさんは私の知り合いの税理士のクライアントでした。私も招かれて何度かコンペに参加したことがあるのですが、行くたびに他の業者の人たちの愚痴が聞こえてきました。「今、会社が忙しくて、ゴルフなんかしている場合じゃないのに」「二次会までやると、丸一日漬れてしまう。いい加減にしてほしい」「でも、参加しておかないと、ライバル社に差をつけられてしまう」といった声です。
業者は好んで参加しているわけではなく、今後の取引のことを考えて′′しかたなく′′参加していたのです。
しかし、そういった本音の部分はOさんの耳には入りません。Oさん自身に悪気はなく、「なかなか行けないゴルフ場に招待してあげた」「みんな楽しんでゴルフをやって、喜んでくれている」と思っていたようです。
さらに、業者を困らせたのは、Oさんから経営をバトンタッチされた息子が、先代と同じように業者会を頻繁に開くだけでなく、業者にノルマまで課すようになったことです。
息子は「今度、新しくレストランをオープンしたから、最低3組はここで披露宴かパーティーをやってほしい」と言い出しました。彼にしてみれば、自分のところで食事会を開けば、自分も業者もみんなが潤うので、ウィンーウィンの関係になれるという理屈です。
ゴルフコンペだけならと我慢して先代とつき合っていた業者たちの間に、さすがに後継者にはついていけないという空気が広がりました。表面上は業者も今まで通り付き合っているようですが、裏ではすでに総スカン状態で、いつ離れていくか分かりません。
問題点まとめ
問題点まとめ
独りよがりの「接待」は相手にとって迷惑でしかない
Oさんの「接待」は、取引先の業者にとっては「迷惑」以外の何ものでもありません。しかも後継者である息子は、それに輪をかけて「紹介ノルマ」という重い負担を業者に負わせてしまいました。
相手の気持ちを汲めない時点で、Oさん親子は「周囲が見えない′′痛い人′′」「空気の読めない人」「自分の都合しか考えない独りよがりな人」です。
悲しいのは、それを指摘してくれる人がOさん親子の周りにいないことでしょう。ワンマン経営でやってきた会社ほど、Oさん親子のようなパターンに陥りがちです。耳の痛いことも敢えて言ってくれるブレインもかつてはいたのかもしれませんが、それを大事にしてこなかった結果、親子ともども′′裸の王様′′になってしまいました。