CASE08
後継者への資産一点集中で、他の子から不満爆発
CASE08
後継者への資産一点集中で、他の子から不満爆発
Hさん 75歳/【家族】妻、長男、二男
前のGさんの事例とは真逆で、後継者である長男に遺産のほとんどを相続したことで、他の兄弟から不満が出たケースもありました。
Hさんの会社は業績がよく、自社株の評価が2億円以上ありました。事業用の土地。建物、社用車など諸々を含めると、長男は約3億円を相続したことになります。
二男は、生命保険金の数千万をもらっただけでした。
単純に額面だけで比べると、たしかに長男がたくさん相続しています。そのため遺産分割協議で、二男から「待った」がかかりました。この段階で、私のもとに長男から相談が持ち掛けられました。
こういう場合、遺産の偏りをなくすために「代償分割」という方法をとるのが一般的です。長男が多くもらった分を、現金で二男に渡して埋め合わせするのです。
ところが、Hさんは長男に会社関係の資産を引き継がせていましたが、肝心の長男はキャッシュを持っていませんでした。代償分割したくても、肝心のお金を持ち合わせていなかったのです。
その後も何度も話し合いの場を設けましたが、兄弟間での妥協点は見つかりませんでした。結局、裁判が避けられない事態となり、私の手を離れて、弁護士の出番となりました。
問題点まとめ
問題点まとめ
相続財産の不平等
相続人の誰かだけの遺産が多かったり少なかったりすると、トラブルが起こりやすくなります。Hさんの場合も、長男の遺産だけが多かったことで二男から反発を食らい、裁判にもつれ込んでしまいました。また、長男に遺産が集中したことで、他の相続人が不服として遺留分の減殺請求をする可能性があります。減殺請求権を行使されると、侵害している遺留分の額を、遺留分権利者に返還しなければなりません。こうしたトラブルを避けるためにも、遺留分を考慮して相続する必要があります。
後継者に代償分割するだけの資金力がない
代償分割ができれば遺産の偏りを解消でき、裁判を避けることができたはずなのですが、Hさんの長男にはそれだけのお金がありませんでした。代償分割のための現金は、相続された遺産を用いることはできません。前もって贈与したり、役員報酬として準備しておくなど、長男がキャッシュを用意できるようなしくみをHさんがつくっておかなかったことが悔やまれます。