秘訣14
自社株式は後継者一人に集中させる
秘訣14
自社株式は後継者一人に集中させる
これまでにも何度か述べましたが、会社は持ち株の比率によって経営権が決まってきます。ですから、会社をコントロールするためにも、またクーデターの種を蒔かないためにも、後継者一人に集めるのがセオリーです。Gさんは株式を分散させることの危険性を知っていたのですから、妻に十分に言い含め、何としても納得させるべきだったと思います。Gさんのケースは、Gさん自身でトラブルの芽を摘み取ることができたはずなのに、とても残念なことです。
自社株の分散のリスクについては、こんなこともあります。
経営者が自社株を多く持っていると、相続のときに多額の相続税が課せられてしまうのを恐れて、あえて株をばら蒔き、自分では持たないようにしている人がいます。ばら蒔くときはほとんどタダ同然の値段で相手に売りますが、いざ相手から買い戻そうとしたときには、その何十倍、何百倍になっていることがあるのです。
1株100円だったものが1万円になっていたとしたら、買い戻すために1株につき9900円を失うことになります。しかも、「買い戻したい」と言って相手がそれに応じてくれればいいですが、「手放したくない」と拒否されれば、説得にも時間や労力がかかります。
株式は一度ばら蒔くと、後から集めるのに時間もお金も労力も多くかかるのだということを覚えておいてください。
中小企業経営者に多い例として、普段世話になっている人(たとえば顧問税理士など)に、自社株の一部を渡している人がいます。「株を持っておいてもらうと、自分の味方でいてくれる気がして安心」という意識があるのかもしれません。私も経営者の方から「うちの株を持っておいて」と言われたことが何度かあります。
しかし、今言ったように、自社株を自分以外にむやみに流出させることは非常にリスクを伴います。間違っても自分から自社株をばら蒔くようなことはしないでください。もし、すでに分散している場合は、早急に買い戻すことを検討しましょう。