秘訣20
後継者になりたい子の数だけ会社をつくる
秘訣20
後継者になりたい子の数だけ会社をつくる
経営者は自分がトップに立った日から、どんな不測の事態が起こっても大丈夫なように、できる限りのリスクヘッジをしておくべきです。後継者への事業の引き継ぎは最低でも5~10年と言いましたが、欲を言えば準備を始めるのは早ければ早いに越したことはありません。
代々、親子承継で続いてきた会社なら、わが子を後継者にすることは経営者の中で早くから決まっているでしょう。それならば、日頃から折に触れて周りに言っておくとか、遺言書で指名しておくなどの意思表示をしておくことです。
子が1人だけなら混乱は少ないかもしれませんが、兄弟がいる場合は、どの子も後継者になれると期待を持ってしまうことがあります。また、Iさんのように「中継ぎ」のはずの人物が、実権を握って譲らないケースもあります。
あるユニークな成功例でいえば、代々会社を継ぐ長男には「秀」という字がつく名前にするというしきたりを持つ一族がいました。他の子の名前には秀の字は使いません。つまり、生まれたときから、長男が家業を継ぐことが決まっているのです。まるで将軍家のお世継ぎのようなルールですが、一族の中で暗黙の了解になっているために、周りから異論が出てきたことは一度もないと言っていました。しかしこれはとても特殊な例といえるでしょう。
息子が2人いて、どちらも会社を継ぎたいという場合、会社を2つつくってそれぞれに継がせる方法もあります。
方法としては、おもに3つの方向性があります。
1つは、「A部門を独立させて長男に継がせ、B部門を独立させて二男に継がせる」というように、事業ごとで会社を分割する方法です。ただし、この場合は会社を2分割することで企業力も半分になってしまう点が要注意です。また、兄弟同士でライバル関係になってしまう点にも注意が必要でしょう。
兄弟で競合になるのを避けるためには、「都心の本社を長男に継がせ、地方支社をつくって二男に継がせる」というように、担当するエリアで会社を分ける方法があります。
さらに、「本業の会社は長男に継がせて、二男には新規事業を起こして継がせる」という方法もあります。
ただ、新しい会社を興すことにはそれなりの危険も伴います。経営が軌道に乗ればいいですが、うまくいかないと元の会社まで道連れに経営悪化してしまうこともあります。グループ会社として発展していけるか、会社を起こすことが本当に必要な対策かなどを冷静に見極めなくてはならないでしょう。