秘訣16
話し合いは親族が全員集まった場で行う
秘訣16
話し合いは親族が全員集まった場で行う
「相続は兄弟平等に」の考え方自体は間違いではありません。兄弟間での不公平を取り除くという意味では、遺産分けを平等にするというのは大切なことです。ただ、自社の安定を考えるのであれば、やはり後継者の子に会社関連の資産が集中するのはやむをえない部分があります。
何をもって「平等」とするかは人それぞれです。金銭的な同額を平等とする人もいれば、背負う責任の重さをもって平等とする人もいるでしょう。後継者には、会社や従業員を守っていくという重い責任がかかります。その分、資産の多くを引き継いだとしても、経営負担を考えれば「平等」と考えることができます。
そもそも株式というのは、実際には現金化できない性質のものです。長男は株を何億円もらっても、自分のお金としては一切使えません。そう考えれば、むしろ現金で何千万円かもらえた二男のほうが恵まれているという考え方もできます。その点を、後継者でない子にはぜひ理解してもらいたいものです。
親が子どもたちに、「長男には経営を頑張ってもらわなければならないから、その分、遺産相続が多くなるが理解してくれ」というように生前に話しておけば、後継者以外の子も納得しやすいでしょう。生前に話すことができなければ、遺言書にしたためておくのでも構いません。
事業承継や相続についての話し合いは、関係者が揃った場で行うというのがトラブルを防ぐうえで1つポイントになります。
不在者がいる場で話し合うと、「俺の知らないところで勝手に決めた」とか「どうせ私の悪口を言っていたのでしょう」とか「自分たちの都合のよいように話を持っていったに違いない」などと疑心暗鬼が生まれてしまうからです。
特に遺族が結婚して地方にバラバラになって疎遠になっていたり、あまり仲の良くない家族がいるケースでは、何度も話し合いの場をもって、それぞれの腹に落ちるようにしなくてはなりません。不用意なひと言が、くすぶっている想いに一気に火をつけてしまうこともあります。そういう意味で、慎重な話し合いが重要です。
そのためには、第2章の親子承継のトラブル回避でも述べましたが、家族のトラブル回避でも第三者を入れることをお勧めします。自分たちだけで話し合っていると、どうしても本性がむき出しになり、余計に揉めてしまいがちです。話し合いが決裂して、三度と話し合いができないことも多々あります。第三者を入れることで、みんなが少し冷静になれるでしょう。
特に事業承継と相続を同時に進めなくてはいけない局面では、法律や実務の専門知識が絶対に必要になります。素人同士か聞きかじりに知識や不明瞭な情報で話を進めても、ろくな結果にはなりません。ぜひ、専門家を交えての家族会議を開いていただきたいと思います。