秘訣3
親子だけでの話し合いは回避する

秘訣3
親子だけでの話し合いは回避する

私のもとには、子の立場の相談者も多く来られます。相談内容の大半は、「父にはそろそろ引退を考えてほしいが、本人にその気がない。承継や相続の話をしようにも取りつく島がない。どうしたものか」というものです。

会社を後継者に譲ることや、相続についての話を子のほうから持ちかけると、「そんなに早く俺を殺したいのか」「そんなに遺産がほしいのか」と、怒り出す親がたくさんいるようです。子としては親とのケンカは避けたいが、このまま放ってもおけず、気苦労が絶えません。

こういう場合は、親子だけでは話し合いが前を向いて進みませんから、第三者を間に入れます。そうすることで、親子が互いに冷静になり、激しいぶつかり合いや修復の効かない決裂といった事態を避けやすくなります。

第三者は、当事者との利害関係のない中立的な立場の人物がいいでしょう。なぜなら、第三者が自分の得に繋がるほうの味方につくと、話し合いがよけいにこじれ、収拾がつかなくなってしまう恐れがあるからです。

また、事業承継や相続の話は、会社や家の事情、資産の内容、家族の人間関係などが暴露されますから、第三者は秘密を固く守れる人物でなくてはいけません。素人は秘密保護の意識が低いことが多く、つい他人に喋ってしまうことがあるので要注意です。

参考までに私の場合は、親と子どちらの味方になることもしませんが、相談者の気持ちの代弁はします。たとえば、子が父と話ができないと困っているとしたら、「息子さんは会社やお父様の将来を心配しておられますよ」というように。そして、「事業承継も相続もいつかはしなくてはならない問題ですから、今のうちに話し合いませんか」と促します。また、事業承継や相続の準備をしておかないと、どういう不都合が起こるかを、丁寧に分かりやすく説明します。

すると、最初は取りつく島がなくても、徐々に心がほぐれていき、親は親なりの立場や思いや事情があることを打ち明けてくれるようになります。

親の資産については、家族に伝えておくのが基本ですが、意外にみんなできていません。資産の額やお金のありかを教えてしまうと、子がそれを当てにして真面目にやらなくなるという心配が働くようです。事実、子が親の資産を散財してしまうケースも見聞きします。

家族には知られたくないという場合でも、せめて税理士にだけでも本当の資産内容・ありかを伝えておくべきです。本人の死後、見つからないまま放っておくと、失われてしまう資産もあります。

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