秘訣11
子の経営が軌道に乗ったら、口出ししない
秘訣11
子の経営が軌道に乗ったら、口出ししない
自社の株式(代表権)の移行だけでなく、体制そのもの(実権)が息子さんに移行しなければなりません。
現経営者の多くは事業承継の話し合いの場では、「息子に代を譲ったら、自分はきっぱり引退するつもりだ」とたいてい言います。ですが、実際には承継後も会社に来続けてしまうケースがほとんどです。私が数多く手がけてきた事業承継の案件の中でも、宣言通りにすっぱりと身を引いた経営者は、ほとんどいませんでした。
親からすると、いつまでも子どもは子どもです。また、自分が一から育ててきた会社にも思い入れがあります。先行きが心配な気持ちから、なかなか現場から離れられなくなるのでしょう。しかし、代を譲ったからには、後継者や従業員を信じて任せるべきです。
先代が引退するタイミングは、必ずしも承継後すぐでなくてもかまいません。というより、むしろ承継後しばらくは後継者の手法を近くで見守り、経営が安定するのを見届けるのがよいと思います。
考え方としては、「先代が毎日会社に行かなくても仕事が回り、安定して利益を出せるようになったら引退」です。逆に、会社が経営不振にあるときは、先代も心配でしょうし、債務や負債を抱えた状態で後継者に引き継がせるのも負担が大きいので、退くタイミングとしては相応しくありません。
具体的には、先代が毎日出社している状態から、週3、週2……というふうに少しずつ出社の日数を減らしていきます。そして、月に1回も行かなくても済むようになったら、そのときが引退のベストタイミングです。
もう1つ、先代がいつまでも会社に来続けてしまう別の理由として、「仕事以外に趣味がないから」ということがあります。仕事一筋で来た経営者ほど、引退後に何をしていいか分からなくなるようです。
せっかく第二の人生を迎えられたのですから、「ここまで頑張ってきたご褒美」として、興味のあることは何でもやってみたらよいと思います。夫婦水入らずで旅行に行くのもよいし、同じリタイヤ仲間とサークルを始めるのも楽しそうです。若いときにやり残した勉強や、ずっとやってみたかった習い事を始める人もいます。健康づくりのためにスポーツを始めるのもよいことです。
親にはリタイヤ後も楽しく暮らしてもらうことが、子にとっての願いです。会社のことを忘れるくらい、いえ、会社の心配をする時間もないほどに楽しめるものや没頭できる対象を見つけてほしいと思います。