秘訣9
子に決算書の読み方をたたきこむ

秘訣9
子に決算書の読み方をたたきこむ

事業承継を考えるにあたっては、自社の現状把握が重要です。自社株式の評価をすることもそうですが、それ以前に、毎期毎期の決算書に目を通し、経営状態や財政状況をリアルタイムで掴んでおかなければなりません。

決算書は、いわば学生にとっての成績表のようなものです。成績表を見れば、どこが弱いか、強化すべき点はどこかが見えてくるように、決算書を見れば、経営で改善すべきところや事業として力点を置くべきところ、早急に穴を埋めなくてはいけないところなどが分かります。これが読めない経営者は、利益を伸ばせるタイミングを見逃したり、埋めるべき穴に気づかずスルーしてしまうことになり、致命的です。

しかしながら、現実には決算書の読み方を知らない経営者がごまんといます。Cさんはまさしくそんな一人でした。

Cさんは基本的に目の前のキャッシュしか見ていませんでした。彼の感覚で言うと、「今、会社の金庫に500万円の現金があるから、会社は赤字ではない」という捉え方です。以前に銀行から融資を受けた1000万円が返済できていないことが考慮から漏れてしまっているのです。あるいは、自分の懐から会社の不足分を補填することが日常茶飯事で、それらをいちいち帳簿に記録することもしていないために、すっかり忘れてもいました。

Cさんがお粗末すぎると笑う人もいるかもしれませんが、決算書を読めないのであれば、その人もCさんと根本的には変わりません。

経営者は、複式簿記の考え方を身につけることが必要なのです。

簿記には、単式簿記と複式簿記があります。単式簿記は簡単にいうと、家計簿のイメージです。収入から支出を引いて、残高を知るやり方です。たとえば、給与が30万円、借入金が20万円だとします。家計簿では、両方とも「収入」になり、手元には50万円の現金があります。そこで、40万円使ってもまだ10万円余裕があると思ってしまうのが、Cさんの考え方です。

一方、複式簿記は、家計簿のほかに財産目録と借金の明細もつくるようなイメージです。決算書の「貸借対照表」を思い出してください。貸借対照表では、左側に「借方」があり、右側に「貸方」があります。給与の30万円は借方に記入し、借入金の20万円は貸方に記入されます。すると、実際の収入は10万円しかないことが分かります。「目の前に50万円あるから40万円使っても大丈夫だ」という判断にはならないでしょう。

決算書の「損益計算書」は、期間ごとの支出と収入を表します。稼いだ金額はもちろんのこと、稼ぐためにかかった費用や本業で稼いだのか、副業で稼いだのかなども把握できます。

「貸借対照表」と「損益計算書」の2つは読めるようになることが、経営者としての最低条件だと思ってください。

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