CASE06
資産の公私混同で銀行から融資を渋られ、事業承継に暗雲
CASE06
資産の公私混同で銀行から融資を渋られ、事業承継に暗雲
Fさん 65歳/【家族】妻、長男
中小企業の経理で問題になりやすいのが、必要経費の使い道です。私の経験上、中小企業や個人事業主、法人を立ち上げたばかりの経営者の多くが、「これは必要経費としては認められないのでは?」と思われる支出をしています。
経営者本人は公私混同しているつもりはないようですが、たとえば、「接待ゴルフ」と称して趣味のゴルフに出かけ、それを交際費にしたり、個人用の高級車を法人名義で購入したり、法人のクレジットカードで私用の買い物をしたり、休日に家族とした食事代を経費で落としたりなどは、まさしく公私混同の支出です。
関東地方で会社を経営するFさんは流行に敏感で人に流されやすいところがあり、経営者仲間がボートを買ったと聞くと、自分も欲しくなってしまうタイプです。しかも気に入ったボートがあると、会社の経費で2台でも買ってしまいます。
ボートはお金持ちの遊びと言われるように、港に泊めておくための保管料やメンテナンスの費用などがかさみます。しかもFさんが住んでいるのは、海のない埼玉です。そうそう海まで行ってボートに乗る機会もありません。仕事で「接待ボート」というのも考えにくく、どう考えても個人の遊びのために買ったとしか考えられません。
経営者のこうした公私混同は、社員や取引先、金融機関はシビアな目で見ています。特に銀行はよく思いません。
Fさんの場合も「真面目に経営をしていないのではないか」という印象を強く持たれ、融資を打ち切る話まで出てしまいました。
Fさんは息子さんに事業承継をして、資産の不透明な部分をリセットすることを約束し、どうにか融資の継続を取りつけました。
困ったのは後継者である息子さんです。財産のリストアップをして、個人の資産と法人の資産を分け、個人で持つべきものは法人から買い取ったり、要らない資産は売却したりなどの整理をしようとしました。しかし、財産がごちゃ混ぜになっていたり、財産目録に載っていないものが出てきたりと、作業は難航しました。結局、私もお手伝いをしていますが、2年経った今もまだ終わっていません。
問題点まとめ
問題点まとめ
アバウトな会計は銀行に嫌われる
財産の公私混同は、銀行からの印象を悪くします。会計や財務がいい加減な会社は、経営的にもずさんであると目され、融資をするのは危険だと判断されてしまいます。Fさんの場合も、そのずさんな財務体質が懸念材料となり、危うく融資を切られるところでした。
現在、後継者の息子さんが資産の整理をしていますが、長年積み上げてきたずさんな管理によって、会社の資産と個人資産を分ける作業に膨大な時間をとられているそうです。後継者にとって、その苦労は並大抵ではありません。
財産の公私混同という点でよく起こるのが、会社の会計で購入した絵画などの美術品を、経営者の自宅で使用しているというケースです。美術品を好む経営者の場合、会社に飾るつもりで絵画を購入しても、飾る場所がなくなってしまい自宅に持ち帰ることがあります。そうした場合、本当は個人目的で購入したのではないかと疑惑をかけられる危険性が高まります。また美術品購入の際、帳簿に「絵画」という名目だけを記載していると、後から確認する際にどの作品か把握がしづらくなります。高価な美術品を購入した場合は特に、詳細な記録が残っていないと、美術品名日で不透明な資金の移動があったのではという疑いがかかることもあります。作品名などを詳細に記録し、しっかりと管理をしておくようにしましょう。