秘訣10
会社を閉じる英断を恐れない
秘訣10
会社を閉じる英断を恐れない
Cさんと同じような例は、非常に多く存在します。ある会社で顧間をしていたとき、経営がみるみる傾いていきました。顧間をしていた数年間で、私は何度も「もう会社を閉じるべきです」と社長に進言しました。「今なら、まだ財産がいくらかは残せますから」と説得したのですが、その方もなかなか聞き入れてはくれず、逆に怒りを買ってしまいました。
経営者にしてみれば耳の痛い話なので、当然の反応かもしれません。私はその後もしつこく社長に言い続け、ようやく4回目にして承諾を取りつけたのですが、会社を閉じた結果、社長の財産はすでにゼロになっていました。ただ1つ、借金がなかったことだけが、せめてもの救いでした。
税理士としては、クライアントに会社を続けてもらったほうが、顧問料がもらえるので自分の利益になります。そのため、普通は「会社を閉じろ」とは言いません。心無い税理士になると、潰れることが分かっていてもギリギリまでその事実を伝えずに、経営を続けさせる人もいます。
ですが、真にクライアントのためを思うならば、たとえ自分との顧間関係が切れようとも、辞めどきを忠告すべきだと私は考えます。
耳の痛いことも、きちんと言ってくれる人を持つことは、ワンマンになりがちな中小企業の経営者にとって大事なことではないでしょうか。最後に決断するのは経営者自身ですが、その決断を下すための助言は求めるべきだと思います。専門家なら「今こうすると、こうなりますよ」とか「これをしておかないと、後でこんな不具合が出てくるかもしれません」など、先を見てアドバイスをしてくれます。
結果的に会社を閉じることになれば、周りからは「会社を潰した」と陰口を言われるかもしれません。田舎になればなるほど、噂として広まりもするでしょう。ですが、自身のメンツより、家族や財産を守ることのほうがずっと重要なはずです。