理念や経営のコツを教えられない、昭和の経営者
理念や経営のコツを教えられない、昭和の経営者
中小企業で後継者の育成を難しくしている原因には、「業務が忙しくて時間が足りない」「後継者の育成を行う資金がない」などがあります。後継者の育成が大事なことは重々承知だが、日々の業務に追われて時間的にも金銭的にも手が回らない……という経営者の嘆きが、この数字の向こうから聞こえてきそうです。それだけではありません。「経営者の指導力が不足している」「後継者の養成方法が分からない」といった経営者の悩みや迷いもうかがえます。しかもこうした中小企業経営者は日々の経営に忙しく、家族と会話ができていないことが多いのです。後継者に承継すべき理念や経営ノウハウの多くは、明文化されておらず、それを整理してまとめるにも時間がかかるため、日常会話のなかからも学びとっていかなければ追いつきません。
さらに、昭和の激動の時代を生き抜いてきた経営者たちには、「仕事は口で説明するより体で覚えるもの」「男は多くを語らず、背中で生き様を語る」といった考えや信念を持つ昔気質の人も多くいます。家族との団槃よりも仕事を最優先にして、ひたすら走り続けてきたという経営者も多いでしょう。こうした会話不足から、ただでさえ後継者に伝わりにくい経営ノウハウが、わが子であれば分かってくれるはずという親の思い込みにより、より一層伝わりにくくなるのです。
しかも、親子という近しい間柄ゆえに、照れがあって本音を語りにくく、お互い遠慮がない分、素直に話せない。聞けないということもあります。つまり、経営者である親と後継者である子とのコミュニケーション不足が大きな壁となっているのです。